Q.私は、大阪に住む在日韓国人です。遺産相続のため、法務局から兄の韓国の家族関係証明書を取得するよう言われました。
しかし、韓国領事館に出向いたところ、韓国の家族関係証明書がとれるのは「本人または配偶者、直系血族だけだ」といわれ、追い返されてしまいました。
韓国の兄弟姉妹の韓国戸籍や家族関係証明書は以前は取れたはずなのに、納得がいきません。兄の家族関係証明書は本当に取れないのでしょうか?
A.確かに、以前は兄弟姉妹の韓国戸籍謄本や家族関係証明書の取得は可能でした。しかし、法改正により、結論から言うと、現在は原則として兄の家族関係証明書は請求できません。しかし、ケースによっては絶対に取れないわけではありません。
この理由は、韓国で次のような決定があったからです。
韓国の裁判で兄弟姉妹の証明書を請求できる法律は意見であるとの主張がなされ、2016年6月30日、家族関係の登録等に関する法律第14条第1項の請求権者のうち兄弟姉妹の部分につき、憲法裁判所で違憲決定が下されました。
これにより、家族関係登録などに関する法律第14条第1項の請求権者のうち「兄弟姉妹」の部分が、2016年6月30日憲法裁判所にて違憲決定となり、その効力が喪失されました。
それまでは本人の同意がなくても、配偶者・直系血族・兄弟姉妹は本人の家族関係証明書(※日本の現在戸籍謄本の一部に相当)等を発給してもらうことが可能でした。
しかしながら上記の違憲決定により、2016年7月1日からは委任がなければ、原則として兄弟姉妹が他の兄弟姉妹の家族関係証明書等登録事項別証明書を直接請求することが出来なくなりました。
この決定を受け、駐日韓国総領事館でも翌7月1日から、原則として兄弟姉妹が他の兄弟姉妹の登録事項別証明書を直接請求することはできなくなっています。
これは個人情報保護の徹底や兄弟姉妹間での証明書の悪用防止という観点からは望ましいとはいえます。
ただ、この変更により、我々も従来、依頼人本人からの委任状だけで足りていたものが、今後他の兄弟姉妹の委任状も併せて求めなければならない場合がでてきております。
実務上では、韓国人と結婚する場合などでは本人のものを請求するだけなので大きな問題はありません。
しかし、これにより、相続や帰化申請では大きな支障が出ることが時々あります。
例えば、遺産相続手続きについては、兄弟姉妹間の折り合いが悪く、長年家族の交流ががないケースや遺産分割で相続財産の割合等でもめているなどのケースでは、兄弟姉妹の協力が得られず、委任状を出すのを拒否されたりして、なかなか手続きが進まなくなることもあります。
ただし上記で重要なのは、「原則として」というところです。絶対的に兄弟姉妹の証明書を請求できないとは言っていない、ということです。
ですから逆に言うと、「兄弟姉妹の家族関係証明書等を請求する必要がある場合は、家族関係証明書を請求できることがある」ということです。
厄介なのは、どうすれば兄弟姉妹の証明書を出してくれるのか、領事館側ははっきり言わない、どのような書類が必要か等のサポートもしてくれない、ということです。
そのため、何をどうしたら書類が取得できるのかわからず、多くの在日韓国人の方の帰化や相続の手続きがストップしてしまうことも多いようです。
でも、ご安心下さい。
当事務所には、韓国戸籍の請求や翻訳を専門に行う実務経験豊富な行政書士が在籍しており、苦労はしますが、請求の必要性が本当にある場合であれば、ほとんどの場合に証明書は取得できています。
当事務所でも、韓国人の兄弟姉妹の家族関係証明書の取得をサポートしています。
相続や帰化などで多くの韓国戸籍(除籍謄本・登録事項別証明書)が必要な場合には、まずは専門家にご相談ください。