在日韓国人の遺産相続手続きの法律は?

日本人が日本で死亡し、日本の財産を相続する場合、日本の法律が適用されます。この場合は理解できると思います。

一方、在日韓国人は、生活の本拠地は日本にあるが、国籍は韓国にあります。このような場合に、「在日韓国人が死亡したときの相続の法律は、日本の法律で処理するのか、韓国の法律で処理するのか?」という問題が生じます。

これを解決する基準となる法律が、日本の国際私法である「法の適用に関する通則法」です。

この法律の36条には、「相続は、被相続人の本国法による。」と定められています。被相続人とは相続される人、つまり亡くなった人のことです。

したがって、亡くなったのは韓国人ですから、韓国の法律が適用されるのが原則です。

しかしながら、在日韓国人は、日本に住んでいます。韓国の法律が適用されるといっても、韓国語も話せなければ、韓国に行ったことすらない人も大勢います。

そこで、遺言で相続の法律を日本法に指定した場合は日本法によることが可能です。

具体的には、韓国の国際私法49条1項は、日本と同じように「相続は被相続人の本国法による」との定めがありますが、2項では、遺言により所定の相続の準拠法を指定した場合は、その法によることを定めています。

これによれば、在日韓国人が相続手続きが複雑にならないよう、「自分の常居所地法である日本法を相続準拠法と指定する」旨の遺言を作成しておけば、日本の相続法が適用されることになります。

 

相続の準拠法が韓国法になることの重要性

当方がヒアリングする中で、相続の準拠法が原則として韓国法であることを知らない人在日韓国人が非常に多いです。

ですから、よく聞く話が「自分が死ねば奥さんに財産の半分が行くから問題ない」と考えています。

しかしながら、これはとんでもない間違いです。日本法と韓国法では相続の際の法定相続分の割合は異なります。

したがって、日本法を適用するか、韓国法を適用するかで相続の割合が大きく違ってきます。

これはどういうことか、説明します。

まず、在日韓国人が妻と子供を残して亡くなったとします。

日本法によれば妻が相続財産の2分の1、子供たちが2分の1を頭割りで残りを分配します。

しかし、韓国法は子供と妻の相続分は同じではありません。

韓国法の場合、妻の取り分は子供達一人の分配分の1.5倍です。これはどういう意味をもつのでしょうか。

まず、子供1人ならば1:1.5つまり子供は33%、妻の取り分は67%になり、妻の取り分が多くなります。

しかし、子供が6人いた場合、1:1:1:1:1:1:1.5となり、つまり、妻の取り分はたったの20%となります。

つまり、ざっくりいうなら、子だくさんの場合在日韓国人の妻の取り分はだんだん少なくなります。

このような場合、在日韓国人の夫が亡くなった後に、奥さんと子供が血縁がないとか、仲が悪い場合に相続トラブルの引き金になりかねないのです。

 

 

韓国民法による法定相続分

次に、韓国民法による法定相続分につき解説します。

韓国の法定相続人の範囲は次の通りになります。 日本とは少し異なりますので、注意が必要です。
第1順位:被相続人の直系卑属(子や孫)+配偶者

(※日本民法:子)
第2順位:被相続人の直系尊属+配偶者

(※日本民法と同じ)
第3順位:被相続人の兄弟姉妹

(※日本民法:兄弟姉妹+配偶者)
第4順位:被相続人の四親等以内の傍系血族

(※日本民法の場合相続分なし)
「被相続人の配偶者」については、以下のようなルールで相続します。

第1順位(直系卑属)又は第2順位(直系尊属)の相続人がいるときには、その相続人と同順位で共同相続人となります。
第1順位、第2順位の相続人がないときは単独で相続人となります。

相続人がいない場合の相続人は誰なのか?

上記相続人が不在の場合は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護をした者、その他被相続人と特別な縁があった者が遺産を相続します。しかし、そのような者すらいない場合には、被相続人の財産は国庫に帰属することになります。

 

韓国民法と日本民法との主な相違点のまとめ

①配偶者と兄弟姉妹・4親等以内の傍系血族(叔父・叔母・従兄妹)が共同相続人となることはありません。つまり、配偶者がいる場合には兄弟姉妹には相続権はありません。

②子が相続人の場合

・子が被相続人より先に死亡している場合(代襲相続が発生しているとき)は、その子の配偶者も代襲相続人になります。日本の場合は孫のみに代襲相続されます。
・すべての子が相続放棄したときには、その相続順位は「孫」に移ります。日本の場合は被相続人の「親」に相続順位が移ります。
子及び子の配偶者のすべてが死亡している場合
孫は代襲相続人の立場ではなく、第一順位直系卑属である相続人になりますので相続分の計算に注意が必要です。
代襲相続が発生する(被代襲相続人となる場合)は「直系卑属」「兄弟姉妹」のみになります。
配偶者の相続分は直系卑属(又は直系尊属)の相続分の5割加算となります。
③法定相続分の計算例

韓国籍の被相続人崔さん(2017年3月死亡)の相続人は「妻 金恵子」「長女 崔陽子」「長男 崔健一」の3人です。相続財産は日本にある自宅不動産と日本の金融機関の預貯金です。相続分はどのようになるのでしょう?
配偶者の相続分は直系卑属(または直系尊属)の相続分の5割加算となります。
そうすると実際の計算は以下のようになります。

「妻 金恵子」 7分の3

「長女 崔陽子」7分の2

「長男 崔健一」7分の2
よって、2人の子の持分割合は各々2/7になり、配偶者の持分割合は3/7になります。例えば子が3人の場合には、配偶者が3/9(1/3)、3人の子が各々2/9となります。

 

在日韓国人の相続手続きに必要な韓国戸籍

韓国も日本と同じように戸籍があると思われている方も多いようですが、実は、韓国では2008年1月1日より戸籍制度が廃止されています。

韓国でも過去には戸籍があったのですが、韓国では戸主制度が廃止されたことに伴い、戸籍制度を廃止し、家族関係登録制度に移行しました。これは1人1籍の身分登録制度で、簡単に言うと従来の戸籍を個人別に区分・編成したものです。そして、従来の韓国戸籍は除籍謄本と現在戸籍にあたる家族関係証明書にわかれました。

そして、在日韓国人の相続の場合、一般に「被相続人の出生から死亡までの従来の戸籍(除籍謄本)と家族関係証明書の両方とすべての相続人の家族関係証明書が必要となります。

これらの韓国の戸籍や証明書を取得することは近年かなり複雑で難しくなっています。日本からの代理人による取得が困難な場合は、本人または相続人が領事館等を通じて取得しなければなりません。

また、領事館では除籍謄本の請求をしても途中までしか遡れないこともあり、その場合は韓国の本国へ請求が必要となることが少なくありません。

 

韓国の相続法改正について

直近に亡くなった方の相続手続きであればあまり関係ありませんが、以下のような場合、韓国の相続法の改正にも注意する必要があります。

①数十年前の不動産相続登記をしていなかったので最近相続登記手続きを開始した

②数十年前の銀行預金通帳が見つかったので最近銀行預金の解約手続きを開始した
具体的には、被相続人の亡くなった日によって、以下の4つが適用されることとなります。

最近手続きを開始したからといって必ずしも現行法が適用となるわけではありませんのでご注意ください。
・1991年1月1日以降~現在まで:現行民法
・1979年1月1日以降~1990年12月31日まで:旧民法
・1960年1月1日以降~1978年12月31日まで:旧々民法
・1912年4月1日以降~1959年12月31日まで:韓国の従来からの慣習

 

当事務所のサービス

当事務所では、在日韓国人の遺産相続でお悩みの方のため、在日韓国人遺産相続手続き代行サービスを行っております。

在日韓国人の遺産相続手続きや韓国戸籍でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

(料金表)

1.在日韓国人遺産相続手続き代行フルサポートプラン

①相続財産相続5,000万円までの部分

⇒相続財産の1.0%+税

*最低料金は20万円+税となります。

 

②相続財産相続5,000万円を超える部分

⇒相続財産の0.5%

 

2.在日韓国人遺産相続個別サポートプラン

 

サポート名
サポート内容
報酬
不動産名義変更サポート
※司法書士が対応
不動産の名義変更
40,000円~
預貯金名義変更サポート
預貯金の解約
40,000円~
相続放棄サポート
※司法書士が対応
相続放棄申立
30,000円~
遺産分割協議サポート
遺産分割協議サポート
30,000円~
相続人調査・財産調査
相続人の調査
相続財産の調査
30,000円~
遺言書作成サポート
自筆証書遺言作成
公正証書遺言作成
30,000円~
70,000円~
生前対策サポート
生前対策のアドバイス
生前対策の実行
100,000円~
相続税申告サポート
※税理士が対応
相続税の申告
300,000円~
遺留分減殺請求サポート
遺留分減殺請求の行使
100,000円~